910日の都内某所にて、飲食店ユニオンと株式会社かつやの第2回団体交渉を開催しました。今回の団交の内容に入る前に、まず812日に行われた第1回団体交渉のあらましを述べます。

団体交渉に至る経緯については、以下の記事をご覧ください。

http://restaurantunion.blog.jp/archives/7271751.html

◆第1回団体交渉のやり取り

 第1回目の団交での協議内容は大まかに以下の3つでした。

 A,休業補償について(休業期間中の給与補償について)

 B,契約通りの労働条件の回復について(削減された分のシフト回復)

 C,職場改善の要求について(換気扇やエアコンの故障など、安全配慮義務に違反する可能性のあるものの修理・改善)

 以下、A,B,Cに対するそれぞれの主張を、前回のブログにも掲載した団交の経緯も交えつつ、書き記します。

 

A,B,Cに関しての株式会社かつやの主張】

 Aに関して株式会社かつや側は、ボイコット期間中の給与についても補償はしないとのことでした。37度以上の発熱がある社員が出社したのは事実だが、それは当該社員が独断で行ったことであり、上司であるマネージャーはその事実を知らなかったと言います。422日に当該社員から電話をもらった時点で初めてマネージャーは発熱の事実を知り、すぐに接触箇所を消毒して早退するよう指示したとのことでした。さらに、24日には一日かけて店舗の消毒作業を行ったので、十分な安全配慮措置を執ったと主張しています。したがって、店舗は安全であるはずにも関わらず、ボイコットと称し24日以降店へ出勤しなかった従業員に問題があるので給与補償は出来ないと説明しました。
 さらにボイコット後、かつや側の要請により休業させられていた期間の給与補償もできないと回答しています。その理由は、従業員のボイコット中も店の営業はしなければならず、そのために新しい従業員を9人雇い、その者達を念頭に置いたシフトを5月の頭に作成したため、ボイコットメンバーを5月中のシフトには組み込めなかったからだと説明しました。


 Bに関しては、上述の通り、新たに雇った従業員を雇ったため、ボイコットをしたメンバーのシフトを以前と同様に回復させるのは困難であり、また、それにより生じたボイコットメンバーのシフト削減は決して報復措置ではないと説明しました。


 Cに関しては、安全配慮義務に違反する可能性のあるものがあれば、後ほど修理・改善すると約束しました。


【株式会社かつやのA,B,Cへの見解に対する、飲食店ユニオンの反論・主張】
 Aへの回答に対して、当初の要求の通りボイコット期間中の給与についても補償を行うよう要求しました。
 当該社員の出勤が独断専行であったことが事実にしても、正社員である当該社員の行動の責任は会社側にあり、その帰結を免れることは出来ません。
 また、同店舗のアルバイト従業員は当該社員から「熱があることをマネージャーに相談したものの、店舗に赴き作業を行うよう命ぜられた」と聞いています。更に同社員は、店舗に出勤した際にアルバイトに発熱の事実を話したことについて、マネージャーから不用意な発言だとと咎められたと言います。

 さらに、該当社員が触ったところを消毒させたという話ですが、それを目撃した従業員はおらず、それ以前にコロナウイルスに感染疑いのある人間に消毒作業を直々に行わせるということに、果たして意味があったのかどうかということも、ここに付言しておきます。

 以上のような対応に従業員は不信感並びにコロナウイルスに感染するかもしれないという不安感を抱き、ボイコットを決行しました。そして24日に、一日かけて店の消毒作業をし、都の基準に見合う安全配慮措置を執ったから復帰するようボイコットした従業員へ連絡したとの話ですが、電話で本部社員と話をした従業員は「ボイコットを止め、出勤をしなければクビにする」と通告されました。これを他の従業員が聞きつけ、会社に対し更なる疑義を深め、出勤をせず、56日までボイコットを断行する運びとなりました。このような経緯があるにも関わらず、ボイコットをした従業員に問題があるという見解には誤りであり、落ち度はこちらにはありません。加え、ボイコット後の休業補償に関しても、この一連のいきさつに原因があり、非は株式会社かつや側にあります。

よって、ボイコット期間中の給与並びにボイコット後の会社側の要請により休業させられていた分の給与補償を支払う責任があります。


 Bに関しては、契約書に基づいた、以前と同様のシフト状態まで回復をするよう要求しました。
 今現在店舗では、上述の新しい従業員の他に、随時従業員を募集している状態が続いています。それに加え他店からもヘルプ要員を呼んでいます。ボイコットメンバーのシフト削減は決して報復措置ではないとのことですが、それならばこの部分を調整し、従来の契約書通りのシフトに戻す必要があります。
 従業員を新たに雇ったことや、それによるボイコットメンバーのシフト削減はAの項目で記載した通り、店側の勝手な都合によるものであり、ボイコットをした従業員に非はありません。ですので、シフトが大幅に削減され、生活が困窮しているアルバイトの従業員もおり、至急この問題を解決し、ボイコットへ参加したメンバーのシフトを、早急に従来のシフト状態まで回復する必要があります。


 Cに関しては、現在店舗でエアコンが故障しているので速やかに修理して欲しいと要求したところ、後日、エアコンの修理が完了しました。飲食店ユニオン側の要求した職場改善の目標が一部達成されました。今後もその他の職場改善が出された場合は、随時対策を要求していく予定です。



◆第2回団体交渉

 それでは第1回を踏まえ、第2回団体交渉のあらましです。今回は前回の団交で話された内容の、具体的な細かい部分の事実確認を行いました。また株式会社かつや側の主張で、前回の発言と食い違っている部分がいくつか見受けられました。なおCに関しては目標が一部達成されたので、今回はA,Bについて主に記述します。

 また、前回の団交では、ボイコット時のかつや本部マネージャーにお越し頂けなかったため、2回目の団交の際には是非同席を願いたいと要望しましたが、今回も来ていただけませんでした。


A,Bに関しての株式会社かつやの主張】

 Aに関して株式会社かつや側は、第1回目に引き続き休業補償の要求には応じず、今後も応ずる意志はないと主張しました。その代わり、Bに関しては歩み寄りたいと話しました。ただし、新規採用のアルバイトもいるため、以前と同様のシフトまで戻すことは難しく、少ししか回復することはできない。Wワークを行っている従業員も沢山いるが、この飲食店ユニオンに加入したボイコットメンバーの中にはWワークをしていない者もいる、それは何故かと質問してきました。


【株式会社かつやの前回の発言と食い違っている主張】

 上記の発言に加え、今回のA,Bに関してのかつや側の発言の中で、前回とは食い違っている主張が出てきました。第1回の団交では、ボイコットメンバーのシフト削減は決して報復措置ではなく、単純に新規採用のアルバイトのシフト確保のためで他に理由はないと言っていました。ですが、今回の団交では、ボイコットの発起人である従業員に関しては、またボイコットを企てる危険性があるからシフト回復は難しいと説明しました。これは前回の主張とは矛盾した発言であります。


【株式会社かつやのA,Bへの見解に対する、飲食店ユニオンの反論・主張】

 Aに関しては飲食店ユニオン側は、あくまで発熱した社員を出勤させるという会社の対

応に問題があったことを主張し、引き続き休業補償を求めていくことを主張しました。

 Bに関しては、契約書に基づいた以前と同様のシフト状態まで回復をするよう、引き続き要求しました。再度ボイコットを行う可能性があるかもしれないからという理由であえてシフトに組み込まないというのは報復措置に該当し、撤回する必要があります。それに飲食店ユニオンに加入し団交が可能となった以上、今後同様の事態に陥った場合でもボイコットする必要はありません。また、Wワークをするか否かは個人の自由であり、当人以外のものがそれを決定する権利はありません。歩み寄りと言いながらも従業員にWワークを暗に勧めるのは不当です。


◆社会への問題提起~結びに代えて~

 今回の第二回団体交渉において、株式会社かつや側から『漠然とした不安感』というワードが幾度も出てきました。

 発熱したコロナウイルス感染疑いのある社員が出勤したことは事実だが、コロナウイルスは例え通勤でも感染する恐れがある。当該社員が店に来たからといってすぐに感染したかもしれないと思い込むのは『漠然とした不安感』でしかない。更にはボイコットを断行し、またその後、消毒作業の処置は執ったのに、またこのままではコロナウイルスに感染するかもしれないと『漠然とした不安感』を抱いたために、ボイコットを継続した。会社側としてはやるべき対策は最低限やったのに、当社に非があるというのは得心がいかない。

 以上の主張は『漠然とした不安感』を従業員に抱かせ続けた、かつや側の一連の『対応』へのボイコットであるという重要な側面を等閑視していると言わざるを得ません。『漠然とした不安感』という言葉とともに頻出した『最低限』というワードも、その表れと言えます。

 都の基準に見合った『最低限』の安全配慮措置さえ行っていれば良い、『最低限』の消毒作業は行った、だから問題はない。

 こういった発言に鑑みた時、それは大企業としての責任を果たしていると言えるのでしょうか。株式会社かつやのような大企業には、企業として、ひいては社会としての規範を示す意志がないのでしょうか。お客様はもちろん従業員へも安心感が与えられるよう、より徹底した感染対策を会社が積極的に講じていくべきです。それがもし実現していれば、今回のようなボイコットという事態には発展していなかったでしょう。

 この徹底的な感染対策はかつやだけの問題ではなく、withコロナという困難な時代を生き抜くための、全ての飲食店のあり方を問う問題です。ユニオンではこの問題を重く捉え、感染対策を怠った責任として、株式会社かつやは従業員に対し、給与を補償すべきと考えています。


 

飲食店ユニオンは、コロナウイルスの影響で不利益を被っている労働者の方々の労働相談を受け付けています。お困りの方は、ぜひ飲食店ユニオンまでご相談ください。

 

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