とんかつ・かつ丼の外食チェーンを展開する株式会社かつやの都内店舗において、37.4度の発熱があり、新型コロナ感染疑いの症状が出ている本部社員を店舗に出勤させたことをめぐって、飲食店ユニオンと株式会社かつやとの間で労使紛争が勃発しています。


◆37度以上の発熱で出社させられた社員

緊急事態宣言下の4月下旬、社内の健康管理規則で、37度以上の発熱で出勤自粛・37.5度以上で出勤禁止と定められていたにも関わらず、かつや都内店舗に本部社員が出勤しました。
当時、全国的にクラスターが発生しており、新型コロナパンデミックという未曾有の危機的状況の中、アルバイト従業員たちにとって、発熱と新型コロナ感染疑いの症状が出ている当該社員と同店舗で従事することは、感染リスクの不安と恐怖の中で働かなければならないことを意味していました。
従業員やお客さんに対しての安全・健康に配慮する義務を怠った会社に対して、疑念と不信感をいだいた当該店舗アルバイト従業員一同は強く抗議して、緊急事態宣言の最初の期間5月6日まで出勤ボイコットを断行しました。


◆ボイコットに対するかつやの報復

このアルバイト従業員一同のボイコットに対して待っていたのは、会社による報復措置でした。5月7日以降、職場復帰の意向を会社に申し入れたところ拒否されました。理由は「みなさんが休んでる間も他店舗ヘルプや新規採用のアルバイトで営業しており、5月のシフトはこのメンバーで組まれているので、シフトに入れることはできない」ということでした。6月以降は職場復帰はできたものの、シフトは大幅に削減され、半分以下になったアルバイトもいました。現在も他店舗ヘルプやアルバイトの新規採用は行われており、ボイコットに参加したアルバイト従業員に対しての報復措置は続いています。このため生活が著しく困窮したアルバイト従業員らは飲食店ユニオンに加入して、シフト削減された休業手当て及び契約書に基いた従前通りのシフト回復を要求し、会社と団体交渉中です。


◆社員一人に責任押しつけ

そもそもの発端は、発熱があり、新型コロナ感染疑いの症状が出ていた社員を、会社が出勤させたことにありました。従業員の安全・健康配慮義務を怠った責任は会社にあります。自分たちとお客さまへ感染拡大するリスクを危惧した、アルバイト従業員のボイコットは、会社に対しての抗議と問題改善を喚起するための行動でした。

しかし、団体交渉において会社は、発熱して新型コロナ感染疑いの症状が出ていた社員の出勤は、独断で行われたものであり、会社の指示ではないと個人に責任転嫁する始末でした。またアルバイト従業員のボイコットに対しても、当該社員はPCR検査で陽性結果が出たわけではないのだから、アルバイト従業員の漠然とした不安感でしかないと主張して、会社に落ち度はないと言いきりました。
はたして、本当にそうでしょうか。仮に当該社員が独断で出勤したことが事実であったとしても、会社の本部社員である以上、会社の責任は免れないのではないでしょうか。また、緊急事態宣言下の4月下旬は、現在よりもPCR検査を受けることは困難でした。当該社員も保健所に問い合わせをしたところ、軽症であることを理由に自宅待機を指示され、PCR検査を受けることはできずに、自然治癒して現在に至っています。そして、たとえ感染疑いの症状があっても、PCR検査で陽性が確定しない限りは、あなた方の漠然とした不安感でしかないない、と片付けてしまう、このような会社に企業倫理という概念は存在するのでしょうか。

かつやに限らず、発熱などの感染疑いのある者、あるいは感染者が発生しているにもかかわらず、休業措置などを取らないどころか、他従業員に告知もせずに事業活動を続けている例が報告されています。このような企業の非倫理的対応は、従業員の健康を脅かすだけでなく、利用するお客様の健康をも脅威にさらす裏切り行為ではないでしょうか。当ユニオンとしては、会社はボイコットした従業員に対して報復措置をとるのではなく、感染対策を怠った責任を重く捉え、給与を補償すべきと考えます。



飲食店ユニオンは、コロナウイルスの影響で不利益を被っている労働者の方々の労働相談を受け付けています。お困りの方は、ぜひ飲食店ユニオンまでご相談ください。

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